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ここは日記+駄文しかおいておりません。 現在はnaruto・銀魂を主としております。 原作には全く関係ありません。 若干女性向けの表現がありますのでどうぞ注意してお入りください。 最初に案内をお読みいただけると助かります。
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2025/06/15 (Sun)

 

 

真っ黒に染まる森をゆっくりと。

 

微塵も気配は感じさせることなく黒い影が空を舞った。

 

 

 

「久しぶりに飲んだな。」

 

火照る頬が冷気にさらされて気持ちいい。

綱手にはホント、感謝だな。いい気分転換ができてよかった、と。

 

一際大きな大木の頂上に立って、ふぅと一息つく。

 

夕方綱手と居酒屋に向かおうとした時より、頭は冷えてきた。

 

冷静に考えてみる。

 

やっぱり、男なら女の子の方が良いだろう。

誰だって同性よりも異性のほうがいいに決まっている。

今日カカシに近づかれた時は少し気持ち悪かった。

俺だって、男に言い寄られるよりもかわいい女の子の方が嬉しい。

それに…シカマルと仲のよさそうな、テマリって子も綺麗だし、強いし…。

幼馴染のイノだって、優しいし仲間思いでいい奴だ。

 

男だし。器だし。だましてるし。

俺なんかより、全然いい。

 

シカマルとテマリの姿を頭に思い浮かべてみると。

とてもしっくりときて、お似合いのカップルのようだ。

そう、想像するだけで…。

 

胸が痛くなる。

 

全く、なんて様だ。

木の葉最強の忍びとして恐れられている俺が。

 

下忍の言動に、こんなに乱されてしまうなんて。

平常心を保とつことができない。

冷静に考えようとすればするほどに、浮上していた気分がどんどん降下していってしまう。

 

止めようと思っても、考え出したら止まらなくなって。

気がつけば体は完全に冷え切っていた。

クシュッ、とくしゃみを一つ。

風邪を引いてもおかしくないくらい、寒い。

さっさと家に帰ろう、と飛び立ちかけたナルトは何か気配を感じて、その方向へと神経を巡らした。

 

「これって…まさか。」

 

 

 

 

 

 

 07-4.気がつけば君をさがしてる

 

 

 

「親父も俺に頼まずに自分で行けばいいのに。ったくめんどくせー。」

 

瞬身の術で行けば一瞬なのに、とぼやきながらもそれが非常にめんどくさくて

奈良家の嫡男がこんな真夜中に一人で歩くなんて、と考えるかもしれない。

他の旧家や名家であればこんなことまずないだろう。

しかしその中で唯一、といっていいほど奈良家の教育方針は自由奔放だ。

他の家庭が過保護に見えるくらいには。

まぁ自分の身くらい自分で守れるだろう、との信頼のあらわれかもしれないが。

そういう事情でシカマルは真夜中にもかぎらず、縁者のもとへ奈良家特製の薬を届けた帰り道であった。

 

「あー、明日は任務か。中忍ってかったるいんだよな。下忍に戻りてー。」

とほほ、と肩を落としながら家へと急ぐ。

早く、家へと帰って床につきたい。

と考えていると、背後にかすかにだが気配を感じて。

 

身構えて警戒を強める。

 

 

ニャー。

 

と消え入りそうな泣き声が聞こえて、シカマルは少し気を抜いて。

 

「ん?猫の声か?」

 

茂みに顔を突っ込んでみると、子猫が寒さで震えていた。

頭から泥をかぶったかのように泥まみれな子猫。

自身がぬれるのも気にせずに子猫を優しく抱え、シカマルは仕方ねえなと笑う。

頭をなでて、湿った、それでも柔らかな毛の気持ちよさを味わいつつ。

 

「お前濡れてるけどあったけぇな、さっさと家帰るか、ミルクあるからな。」

 

猫を抱きかかえると、家への道を先ほどよりも急ぐ。

胸に抱える存在をいたわりながら。

 

 

 

 

 

 

 

「あっぶねぇ。あいつ、俺に気づいてた…訳じゃねぇよな。」

とナルトは言いながら、猫のいた茂みより少し離れた茂みを離れた。

まず、ありえないことだろうけど。

完全に気配を消していたから。それも全力を持って。

中忍どころか今暗部に属しているものの誰であっても気づくことはできないだろう。

 

だからシカマルが感じていた気配は俺じゃないはずだ。

「猫、だよな。シカマルが感じた気配って。」

とはいっても猫の発していた気配はとても弱弱しいもので。

その気配すら、よほど実力のある忍びでなければ気づけるものではない。

 

それなのに。

なぜかシカマルには

先日のことといい…本当に、お前は何なんだ?!とシカマルに問いただしたい。

周りの全ての者を騙している俺に言えた台詞ではないけれど。

でも。

それよりも聞きたいことは山ほどある。

 

俺のことどう思っているの?

テマリのこと…実は…

 

なんて、そんなこと聞けない。

そんな、勇気なんて持ち合わせていない。

なけなしの勇気を振り絞って以前シカマルに必殺技を見せるという口実で誘い出したあの一回きり。

その時は再会した勢いもあり誘うことができたけど。

口実無しで、シカマルを誘い出すなんて…。

 

 

「そういえば休暇くれるって言ってたよな。俺、どうしようかな。」

 

どうせ、休日をもらってもすることいえば家の掃除か修行くらいだ。

そんなのいつもとなんら変わらない。

俺ってさびしいやつなのかな。

 

なんてな、と笑うナルトの後姿はとても儚くて。

表の明るさどころか、先ほど綱手に発揮していた生意気さなんて微塵もない。

もしこの様を綱手が見ていれば「私になんで相談しないんだい!」と抱きしめていそうなくらい。

 

 

「でも偶然だけどシカマルに会えたし。明日いいことあるかも。」

 

 

 

 

 

 

最初は勘違いだろう、なんて思っていたシカマルへの思いはどんどん大きくなって。

シカマルのことを思うといろいろな感情があふれてしまう。

今まで知らなかった負の感情と、シカマルの姿を見るだけで喜びが。

 

先ほどシカマルの胸の中に抱かれた猫にさえ、嫉妬をしてしまう。

泥まみれの猫、なんてまるで俺のようだから。

猫だったらよかったのに。

 

と。

 

 

 


 

 

 

 

「おかえりなさい。お使いご苦労様。」

「おー。ただいま。」

「ってあんた泥まみれじゃないの?!どうしたのよ。」

「めんどくせーな。ちょっと拾い物したんだよ。」

「全くあんたって子は何回注意してもやめないんだから。」

「仕方ねーだろ。放っておくわけにもいかねーし。」

「寒かったでしょ?それにしてもその子泥がすごいわね。風呂場に連れて行って洗ってあげなさい。でも下を汚さないようにするのよ。」

「おー。」

「ミルク用意しておくから。」

「ありがと。」

「ミャー。」

母親のミルク、という言葉に反応したように猫は泣き出した。

ずいぶんと、調子のいいやつだな。

 

「ふきおわったら、ご飯用意しておくからちょっと我慢してろよ。」

「ミャウ。」

 

タオルで子猫を包んで、風呂場へ持っていき、下へおろすと戸を閉める。

逃がさないようにするためだ。

猫は水が嫌いだから、普通シャワーを当てるとほとんどの猫は逃げ出す。

シカマルは経験上それを知っているので、逃げるのを防ぐために戸を閉めるのだ。

今日拾ってきたのは本当に小さな、小さな子猫。

そして泥だらけで猫の持つ本来の毛並みの色さえわからないくらい。

シャワーを浴びせると水圧に負けてしまいそうだったので、シカマルは桶にお湯をためて手で少しずつかけてやった。

 

ニャーニャーと逃げたそうに声を上げるが猫は動く体力がまだ戻ってないようだ。

無駄な体力を使わずにすんだ。

 

「もう終わるから、て…お前きれいになったな。」

 

泥にまみれて汚れていた子猫の体がお湯で流された後に出てきたのは…金色。

いや金色のように明るい黄色の毛並みをした子猫だった。

泥をかぶったときに感じていた悲惨さはうそのように消え去り。

 

「ニャア。」

 

そう鳴く猫の声はとても嬉しそう。

 

 

「…お前、あいつに似てるかもな。」

子猫を撫でるシカマルの表情はとても複雑そうで、子猫はニャ、と不思議そうに首をかしげたのだった。

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2008/03/16 (Sun) お題 Trackback() Comment(0)
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