<仮>瞳を開けば...。2昨日は不手際があり、本当に申し訳ありませんでした。
そしてご指摘下さった方には感謝の言葉しかございません!ありがとうございます!
そして早速、というほどではありませんが、再投稿させていただきました!
待っていただいたというのに、シカマルが全く出てきませんので大変心苦しいのですが…、
一刻も早く次が更新できれば、と思っております。
ナルト←カカシ話です。
カカシ好きさんは見ないほうがいいと思われます。
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「なーんか、むかつくんだよねぇ。」
ポツリとつぶやくその姿はとても悲しそうで。
まるで何かを耐えるように。
グッと力を入れてこぶしを握りこんだ。
顔のほとんどは布やら額宛で隠されていたが。
唯一隠していない右の瞳の奥には、焦りのような、怒りのような感情が映し出されていた。
2.
それはシカマルが深い眠りから目覚め、解部へ向かい仕事に精を出し始める数刻ほど後のこと。
あたりは日が沈み、街灯がなければ道が見えないほどに暗くなっていた。
足元ですら、暗くて何も見えないほどに。
その闇を利用するがごとく、木の葉のはずれの森には二人の暗部が姿を現し、木の枝を飛び駆けていた。
その姿を目に留めるものは誰もいなかった。
いたとしてもその者に与えられるのは死か、記憶を消されるかの二択のみ。
暗部は通常仮面を被り、火影に与えられた名を名乗る。
何らかの特殊な事情がない限り、正体を明かすことはない。
しかしその通則を破り、全里に名を知られ、仮面が意味をなさない者がいた。
その名を畑カカシ。
齢13歳にして上忍へと昇格し、里内でも高い評価を得て天才忍者として噂にのぼる事が多い。
そしてカカシはうちは一族ではないものの、ある時期から瞳術を使うようになった。
里外でも知られるほどに有名になったうちは一族の一部のみが会得できる瞳術:車輪眼。
敵がある程度の知識と実力を持ち合わせているのであれば、カカシだと気付く者は少なくない。
そのためか、最近ではまったく仮面をつけなくなったようだ。
しかし天才と聞こえ高いカカシが後方に着き、息を切らしながら走っている。
…どうやらカカシは全力疾走しているようであるが、追いつけていない。
「ね~ちょ、待ってって!っ…弧葉ってば!!」
カカシの言葉に前方にいる忍びはやれやれ、とでも言うように足を止めた。
「カカシ…まだ任務地にもついてないぞ。担当上忍になってから鍛錬が足りないんじゃないのか?」
今のうちに…とでもいうかのようにカカシは急いで呼吸を整えた。
「確かに最近サボってたけど…孤葉が早すぎるんだって!」
呼吸の荒いカカシを尻目に、孤葉にはそれがよく耳にする内容だけに耳が痛かった。
なぜなら部下の…どの暗部の中にも孤葉のスピードに着いてくる者はおらず、カカシと同じようにスピードを抑えてほしい、と懇願されるのだ。
といっても孤葉は全力で走っているわけではない。
そして暗部の質が落ちているわけでもない。
孤葉一人が飛びぬけて、すごいだけの話だ。
だから孤葉はあまりスピードを出さないように走っているのだが、如何せん前方を走っていると、どうしても自分のペースで走ってしまう。
今日はいつもよりも足取りが軽く感じるから、余計に。
しかしカカシにしてみればたまったものではない。
任務地に着く前にエネルギー切れなんて、情けないことこの上ない。
それでも、カカシよりも弧葉の頭を占拠していたのは昨日の出来事。
早く帰って、アイツと。
シカマルと、話がしたいと。
そう は言っても、里に帰り着いた後シカマルに会いになんて行く勇気なんて持ち合わせてないのだけれど。
わかった、と言って孤葉は先ほどよりもややスピードを落として、任務地へと向かった。
後を追うカカシには孤葉が楽しそうに見えて。
それがなんだか、面白くなくて。
なぜなら孤葉の機嫌がいい理由に心当たりがあったから。
俺がその理由であったら、踊りまわってしまうくらい嬉しいんだろうけど。
…十中八九、原因は昨夜出会った少年、が原因だろうねぇ。
正体を知りながらも、受け入れてくれたこの子の仲間。
カカシ自身、とても驚かされたというのが素直な気持ち。
そして担当上忍と言う立場からすれば、理解者ができてよかったね、と一緒に喜ばなければならないのだろうが。
そんなこと、できなかった。
孤葉には仲間意識とも憧れとも違う、何か特別な思いを感じていたのだから。
俺の方が先に知ったのに。
もちろん、暗部からは引退していたので孤葉の正体に気がついたわけでもなければ、ナルトに必要以上かかわっていたわけでもない。
ただ、他の教え子と同じように担当上忍として接していただけだ。
だから。
知った時に無知だった自分に後悔とふがいなさを感じたのも事実。
だけど、それよりも。
孤葉という存在に、何者にも負けないナルトの強さに引かれたのもまた一つの事実だった。
それからのカカシの行動は早かった。
火影に直談判後、暗部へと復帰。
そして今へと至る。
それまでとの違いにおかしくなった、とよく言われるがそんなことはたいした問題ではない。
傍にいられれば、それでいい。
自分でもずいぶんと乙女チックな考え方だと思う。
それでも、青い瞳が自分を見てくれるだけでよかった。
昨日までは。
考えに没頭しつつも、向かってくる敵をなぎ倒す。
今日の敵は雑魚ばかりでたいしたことはないようだ。
何十といた忍びがあっという間に地へと伏していた。
ザシュッ
と最後の一人を孤葉がクナイで引き裂いた。
赤い血が広がり、あたりには鉄くさい血のにおいが立ち込める。
「………」
孤葉は無言で印をきった。
徐々にあたりに火の気が立ち上がり、10分もしないうちに焼け野原となる。
その中心で孤葉は書類を出して、何かを書き出した。
どうやら報告書のようだ。
その姿を見て、まじめだなぁ、と思う。そしてそこが可愛いとも。
そして。
ふと何かを思い出し、どす黒い感情が濛々と体の中心から沸き起こった。
きっとこの感情は嫉妬だろう。
ナルトに恋するまで知らなかった、とても汚い感情。
「ねぇ、仮面はずしてくれない?」
「…何ではずさなきゃなんねぇんだよ。」
心底面倒くさそうな姿に心が折れそうになるケド。
「顔、見たいんだよねぇ。」
と食い下がって。
「表でいつも見てるだろ。」
「…素顔が見たいんだケド。」
食い下がっても。
「無理。」
…落ちた。
俺はショックで、ガーンと頭をしたたか打ち付けられたような悲痛な顔をした。
その表情に罪悪感を感じたのか
「今は任務中だ。正体を知られるわけにはいかない。」
と一応フォローらしきものが入る。
「誰もいないし、大丈夫でしょ。」
しつこく言い募るカカシに、ナルトは何もいっても無駄だと「はぁ」と深くため息をついて踵を返して立ち去ろうとした。
引き止めたくて、ナルトの興味を引くような話題を口にする。
「…ねぇ、昨日のことなんだけどさぁ。」
「…なんだよ?」
ほら、あの子のことなら話をしてくれるくせに。
そう思うと悔しくて悔しくて。
それでも今の俺にはこれしか彼を引き止めることはできないだろう、と自嘲しつつ。
「あの…アスマの班のシカマルって子、本当にナルトのこと秘密にしてくれるのかなぁ、と思って。」
はぁ?と弧葉のどすの聞いた声に、やばい、とカカシは口をつぐむ。
「シカマルが俺のことばらすわけねーだろうが!」
とカカシにいいながら、弧葉…もといナルトは昨夜のことを思い出すと、ほほが赤らむ。
幸い仮面をかぶったままだったので、カカシはその顔を目にすることはなかったが。
それはナルトに恋するカカシにとっては都合のいいことだったのかもしれない。
「アカデミーの時から知ってたのに…詮索もせず黙っててくれたんだから…」
そう、本当に昨夜は驚かされた。
あんなふうに自分を受け入れてくれた人なんて、なかったから。
初めてだった。何も言わずに気づいてくれた人は。
俺の裏の顔を知っているのは火影と…火影が認めた人達だけだったから。
だから。
「ってカカシに言っても仕方ねーよな。じゃあ報告書出してくるから。」
解散、といい終えるとナルトは瞬身の術でその場から消え去った。
「あ、…ったく帰るの早すぎでしょ。」
脱力感にはぁーと深いため息がこぼれる。
何度目のため息だっただろうか。
「仕方ない、てそんな俺が関係ないみたいな言い方しないでもいいでしょ。」
転がっていた岩に腰を下ろして、少しだけ休憩を取って。
ナルトが何処に行ったのか、とかいうことをいろいろ考える。
「……さすがに今日は…我慢するしかないか。昨日、追いかけてってかなり怒らせちゃったし…」
今からどうしよっかなー、と考えて。
空を見上げると、星一つ見えない真っ暗な暗闇が。
今日は薄い雲に覆われていて、何一つ指針となるべきものが全くといっていいほどに見えない。
空と同じように、カカシの心にももやもやとした何かが広がっていた。
出口を探して走り回っているかのように、胸がいっぱいになる。
「このままじゃ…ね。やっぱり、あの子とはきちんと話しておかないと。」
考えてもこのままでは何も始まらない。
そう考えて、カカシは重い腰を上げて、んーと背伸びをして。
「解部に行くか!さすがに…今日は本人と話すの葉無理だろうけど、解部にいけば…。敵の情報収集は欠かせないっていうからね。」
解部へ行こうとして「これじゃ…駄目でしょ。」と自身についた血と血の匂いに気付き、風呂に入ってから、とカカシは瞬身の術で自宅へと向かい去った。
シカマルがいないだろう解部に顔を見せることは、カカシにとって情報収集以上の意味をもっていた。
一つ目は牽制。
そして、二つ目はカカシが解部にシカマルの情報を求めに行ったことを知った時のナルトの反応。
もちろん、カカシが解部にいったことを知れば、烈火のごとく怒るだろう。
カカシは現在暗部に属しており、会部にいく必要は全くといっていいほどない。
任務中に回収した暗号や巻物は報告の際に提出することになっているからである。
暗号を解読してほしい場合も、受付にて書類を提出した上で解読してほしい暗号を提出することになっている。
だから、解部に顔を出すということは何か特別な用事のある場合だけである。
そう、例えば何らかの、誰かの情報をしたいとか。
俺がナルトに執着していることを自覚しているのだから、誰を調べたいかなんて自然と想像がつく。
それでも、怒るだけならばいいのだ。
シカマルに友達以上の特別な感情を感じていなければ。
本当のことを言えば、自分以外誰にも好意なんてもってほしくないけれど。
ナルトはこれから木の葉を背負っていく人間だから。
そんな、馬鹿なことを考えるほど自分はおろかではない。
だから、思う。波打つ感情を抑えつつ。
ナルトにとって、よい理解者がもっと、もっと現れてくれればよいと。
そして、想う。
俺が一番の、理解者になりたい、と。
もちろん理解者という立場のみで終わりたくないとも。
ナルトの特別な、人になりたい、とも。
矛盾だらけなカカシの感情だが。
それは尽きることはないナルトへの想いの形。
恋情にかられた者にとって普通に考えればわかることでも、わからなくなるというのは世の常である。
わかっているつもりになる、ということも。
自分がおろかではない、というカカシの理性は…今はとりあえず働いているのだろう。
だが。
土壇場になれば、良心を裏切ってどのような行動に出るか、なんてこと誰にもわからない。
今はっきりしていることは、カカシにとってナルトが興味を示しているシカマルが、邪魔以外の何者でもないということ。
シカマルが何を考えているかはカカシにとってどうでもいいことなのだ。
敵の情報を知ることは後々役に立つことがあるかもしれない。
ただ、それだけ。そう考えて、カカシは解部に向かうことを決めた。
これから面倒くさいことになる、と朝感じたシカマルの予感は今夜にでも当たることとなる。
感があたったことをシカマル絶対喜ばないだろうけれど。
とりあえず、シカマルに危険が迫っている、ということを教えるものはいない。
常人よりも忍びとして鍛えられたさすがの第六感も、生命の危機でなければ働かないのかもしれない。
ある意味、死ぬよりも面倒くさいというかもしれないが。
まだまだこれから、である。
父に、友人に、恋敵に。
と一挙にいろいろな事柄が昨夜からシカマルに襲い掛かってきているような気がしないでもないけれど。
そういう星の下に生まれてしまった。
と何事も諦めることが肝心である。
すでに物語は始まってしまったのだから。