「え？そういう話に落ち着いたんだ!」
「そうじゃ。文句はあるまい。」
「う～ん。確かに…はっきり意思関係無しにじゃないし、俺次第だし、縁談もなくなるし…さすがじっちゃん！ありがとうってば！」
そういって満面の笑みで火影に久しぶりに抱きついた。
抱きつかれた火影はもうデレデレで孫バカ丸出しである。
この姿を里のものが見れば威厳も何も合ったものじゃない。
この部屋に二人しかいないことを心より喜ぶしかないだろう。
さてさて肝心の里へのお披露目だったのだが…
「そこでな。相手に迷惑がかからんようにおぬしのべた惚れで話がまとまったことにしてよいかのう。」
「えっっ!!それってちょっと恥ずかしくない?」
ちょっと嫌そうな顔で火影をにらむ。
しかしそこは知らん顔。
この先どうなるかわからないのだから…それにシカマルにはその気はなさそうだったしのぅ。
「じゃがシカマルがナルトに突然…というのは周りのものから恨みを買うじゃろう。それは避けねばならん。シカマルのためじゃ。」
「まぁいっかぁ。表立って迫れるし、ただしシカクには縁談を断る口実としか伝えておらんからの!後はおぬしがうまくやらねば行かんぞ。」
「は～い」
手を上げて元気よく返事をする。
こういう姿を見ると、昔と変わらない。
「とにかく候補者を全部一同に集めて、おぬしからシカマルに告白してもらうからのぅ。」
「えぇ!!みんなの前で!それすげぇはずいっていうかもろばれじゃない?!」
「大丈夫じゃ！そうでなければみな納得すまいぞ」
「うぅ～わかったってば。でどうするの？」
「とりあえずほとぼりが冷めるまでおぬしとシカマルで任務を組ませてやるからその間に何とかするのじゃ！その間は一緒に住むがよい。部屋はこちらで用意しておくでのぅ。」
「（ウルウル）ありがとう！！一生恩に着るってばぁ！！」
目を潤ませながら、ナルトは火影に心から感謝していた。
子供の頃は周りの目があるから表立って助けることは出来なかったが、それでも俺を支えてくれた人。
それが今は俺の幸せのためにできるだけのことをしてくれて…ほんとにありがとう。
その様子に火影は心を打たれていた。が今は縁談のことである。
「シカマルのことを知っているのは他にいるのか?」
「うん…サクラちゃんは気づいてる…気がする。言ってないけど…」
「ではどう告白するか、シカマルにどう接するか決めておきなさい。」
「うん！そうだってばね。ありがとぅｖほんとに感謝するってばよ。」
「おぬしがそう笑っているのがわしにとって何よりじゃ。…がんばるのじゃぞ?」
「うん。応援しててね！俺精一杯がんばるから。」
「うむ。じゃぁこのことはわしの方からシカクに伝えておくからのぅ。」
「うん。お願いします。」
「また遊びに来るのじゃぞ?」
「は～い、じゃあまたね！」
もしかしたらほんとに手が届くかもしれない。
人に好きになってもらうのってとても難しいことだと思うけど。
でも応援してくれる人がいてくれるから。
認めてくれる人がいるから。
自分のために。
幸せのために。
周りの人のために。
がんばろうかなっていう思うことが出来る。
そのためにはまず相談に明日行こうかな。
「やっと久しぶりの休日ね!今日はどうすごそうかしら。」
部屋の窓を開けると、顔に気持ちのいい風が吹いてきた。
窓の外に顔を出すと、遠くのほうには知ってくるナルトの姿が見えた。
「あっ!サクラちゃ～ん！おはよ～ちょっと遊びに行かない？」
手をぶんぶん振りながら、私の名前を大きい声で呼ぶのでとっても恥ずかしい。
近所に丸聞こえじゃない。
用意を終わらせて、外に出るとナルトが座り込んで待っていた。
「ナルトったらそんなに大声で呼ばないで頂戴！うるさいと一緒に遊びに行かないわよ。」
「え～そんなこといわないでよぅ！お願い！」
腕に手を絡ませながら懇願するナルトのあまりの無邪気さに、サクラの口にふっと笑みがこぼれる。
「ほんとに子供っぽいんだから。仕方ないわね!どこにいきたいの？」
こうはいってもナルトをつれて歩くのは気分がいい。
行きかう人はみんな振り返ってみるから、ちょっと優越感に浸れる。
ただ振り返る人の中に男もいるってとこに不満を感じるけど。
「実は…相談したいことがあって…」
「ふーん、まぁいいわ。ご飯でも食べながら聞いてあげる。もちろん今日はあんたのおごりだからね!」
里一番の稼ぎ頭であるナルトはかなりの額を稼いでいるのだ。
お昼をおごるくらい気にもならないことである。
「ここでいい?サクラちゃん。」
「ん～いいわ。なかなかいい店知ってんじゃない!」
といいながら、オシャレなカフェに二人は入っていった。
「私は、これとこれ!あんたは？」
「俺はこれがいいってば？」
メニュー表を指差しながらウェイトレスに注文する。
「かしこまりました。少々お待ちください。」
「で、相談したいことって何なの？」
サクラの問いかけに、ナルトは言いにくそうだったがサクラにせかされて…
「早く言いなさいよ!」
「俺に縁談がきてるってことは知ってるよね?」
「里中の噂になってるわよ?サスケくんからもきてるんでしょ?」
昔サクラはサスケのことを好きで追っかけていたのだが。
サスケが里抜けした後、なんとか木の葉に連れ戻した。
しかしサスケはなかなかこちらの意見に耳を貸さず、暴れ放題だった。
さすがにその様子にはサクラも愛想を尽かしてしまい、内なるサクラが発動してその場を収めたのだが。
その時からサスケはサクラには頭のあがらなくなった。
その後何度もロック・リーにアタックされ、愛されるのもいいかと思いOKしたのだ。
今では二人は木の葉でも有数のラブラブなカップルである。
「そうなんだけど…実は俺好きな人いるんだってばよぉ！」
「え！うそぉ！」
小声でさり気に力をこめたナルトの発言にサクラはかなり驚いていた。
もてるという噂は何度も耳にするものの、この弟分は私のときとは違いかなり奥手らしく遊んだとか、OKしたとかいう噂を聞いたことがないし、本人からもない。
第一付き合うような相手が出来れば、私に一番に報告に来るだろう。
そのナルトに好きな人が出来たとなれば…弟分を取られそうで悔しい気持ちと、応援したい気持ちの半々で複雑な気分である。
「へぇぇ！で、誰なの?私の知ってる人？」
「う、ぅん。ってかシカマル…」
「ええぇぇぇぇぇえ～！！シカふが！！」
大きな声で名前を呼ぼうとしたので、慌ててサクラの口を手でふさいだ。
「声でかいってばよ！」
「ふががぃいふぁぇふぁくないってくるしかったぁ。」
「ごめんごめん！でもほんと内緒だってば!」
「あぁ悪かったわ！でも何でシカマル？確かに同期の中では出世頭っだったけど、今は違うわよ?みんな上忍になったのに一人だけまだ中忍だし、あんたにはヒナタが似合うと思うけど。それか男ならキバとか」
「え？なんでヒナタ?それにキバって騒がしいからやだ！」
サクラはあきれたように
「あんただって十分騒がしいわよ!」
といいながら、ナルトの頭にでこピンをくらわした。
もちろん力をこめたらものすごいことになるので、ほんとに軽くではあるが、
「いてっ！もぅ！だからだってば！二人そろうとうるさくてのんびり出来ないってばよ!」
「まぁキバじゃぁのんびりは出来ないわよね」
「でしょ！その点シカマルは優しいし、頭いいし、話聞いてくれるし、いいとこ山ほどあるってば。」
サクラはナルトが本当にうれしそうにシカマルのことを話すので本気で好きだということが理解できた。
しかしこのナルトを見たら、男供は何をするかわからない…サクラは直感でそう思っていた。
白い肌が桃色に染まり、嬉しそうに一生懸命しゃべっていたのだ。
何もしないで聞いていられるのは、シカマルくらいだろう。
この子は自覚がないからそのくらいがちょうどいいかもしれないわ。
でもねぇ
「でもシカマルって何気に難しくない?あんたの魅力に落ちてるなら、今頃候補に挙がってるだろうし。」
「でもでも！めんどくさくってしてないだけかも。」
「それってサイヤクじゃない。」
サクラはそうかも、と思った。
アカデミー時代からイノと仲のよかったサクラは、シカマルが行動する場合の基準が合理的であるということを知っていたのだ。
自分からナルトの候補だなんて面倒な争いにかかわるとは思えない。
しかしサクラの言葉がナルトにとどめをさしたようだ。
すでに自分の発言によって沈没していたのだから。
「でも～でも～俺シカマルじゃないと嫌なんだってば!」
「まぁいいんじゃない？でも手ごわいわよ？シカマルを狙ってる子って純な子が多いから。」
「ふ、ふ～ん。でもでも！今度火影のじっちゃんが応援してくれて（仮）婚約することになったんだってば」
「え！？それってどういうこと！」
「縁談を断る口実という口実でシカマルのお父さんに頼んでくれたんだってば。」
「あら!それってチャンスじゃない!」
「その期間は任務も住むところも一緒だってば!」
「それはいいわね！迫って惚れさすのよ!」
「おう！でねシカマルのほうからじゃ周りがうるさいから、みんなの前で俺が告白することになったんだってば。」
「それは…難しいわね。」
ナルトの計画に最初は乗り気だったサクラも告白のあたりには難色を示す。
みんなの前で告白…みんなにシカマルのことを好きだと認めさせなければならないが、本当に好きだということはシカマルに悟られてはいけないのである。
「どうしたらいいと思う?」
「う～ん？あれこれ言っても言い訳っぽいし…好きだから俺のことあきらめてくださいって言ってシカマルにキスの一つでもしちゃえばいいんじゃない?」
「え゛！？そ、それはぁ、ちょっと過激だってばぁ。」
ほんとにナルトのほほはすぐ桃色に染まってしまう。
というか真っ赤である。
「いいのよ！既成事実作っちゃえば何もいえないわよ!シカマルにはそのことを話しておくのよ!ものすっごいやつしてもらいなさい。」
「ふぇ？ものすごいやつ？わかったってば。がんばってみるってばよ！」
「そうすればうまくいくと思うわよ?」
「ありがと、サクラちゃん!相談してよかったてば！」
「ふふ。感謝してるなら、経過をちゃんと報告するのよ?そしたらまたアドバイス教えてあげるから!今日はご飯ありがとね！」
「は～い！感謝してます!うまくいったら報告するってば!また行こうね！」
「ええ。待ってるわよ」
いつの間にか成長していたナルトに少し淋しさを覚えつつも、サクラはうれしかった。
恋のことで相談に来てくれたこと。
幸せそうなこと。
二人がどうなるか今はわからないけど。
サクラに向けられたナルトの笑顔を見ていると、とても幸せそうで、その笑顔を見ているとなんだかいいことが起こりそうな予感がしていたのだった。
