縁あって、教えを乞うようになって三日あまり。
初めは半信半疑で。
すぐにそれは驚きに変わった。
一回りも違う年下の男の子はとてもわかりやすく教えてくれた。
同僚でさえさじをなげたというのに。
俺でさえ理解できるように簡単に、理解するまで辛抱強く付き合ってくれた。
そんな彼に、…今では尊敬さえ抱いている。
勉強を教えるというシカマルの言葉はナルトの希望もあり、果たされた。
ナルトのアパートで。
アパートは里のはずれにあって、街から離れていたけれど。
他に場所がない、ということでしかたなく。
「ところでシカマルってアカデミー生?」
綱手に与えられた課題を半分ほど終えて、休憩していた時に。
常々疑問に思っていたことをナルトはシカマルに質問してみた。
「そうだけど、なんで?」
何を当たり前のことを、という風でシカマルは返事をした。
確かに、里の子であれば…しかも忍びの家系であれば、ある程度の年齢になればアカデミーに入学させられるのだ。
奈良と聞けば、木の葉でも旧家であり、忍びの一門だということは知っているはずだ。
でも。
「だ、だって。」
信じられない、とナルトはこれまでの授業を思い返した。
アカデミー時代あまり勉強に関心がなかった、というのも理由のひとつではあるけれど。
どう考えてもシカマルはアカデミーの教師よりも教え方がうまい。
ナルトにも理解できるように噛み砕いて教えてくれる。
それが出来るということはそれだけの下地があるということだ。
だからナルトはどうしてもシカマルがアカデミーで勉強をしている、という姿が想像できなかったのだ。
アカデミーで教えることは基本が主だから。学ぶことなんてないだろうに。
「シカマルアカデミーにいても暇そうだなぁ、と思ったんだってば。」
「あ~まぁそうだな。授業とかも寝てるし。」
「やっぱり!!そうだと思ったんだってば。でもシカマルなら、飛び級とかできると思うってばよ?」
それだけの頭脳を持っていると知ったら、里は離さないだろうから。
「できねぇって。俺アカデミーの成績悪いし。」
「え??!シカマル一番じゃないの?」
「当たり前だっての。俺そんなに優秀じゃねぇよ。」
シカマルが優秀じゃなかったら、いったい誰が優秀だってば。
脱力感を覚えるとともに、ナルトは少しだけ安心した。
頭いいって回りに知られたら、女の子がほうっておかなそうだから。
そこまで考えて、ナルトは自分の思考に驚く。
何で俺が安心するんだってば!?
シカマルはただの先生で、いくら頭がよくてもまだ子供だってば。
いや、子供とかいう問題の前に男だってばよ。
そんなこと考えるほうがおかしいってば。
「ナルト、そろそろ始めるぞ?」
急に声をかけられ、びくっとナルトは驚いて肩を鳴らす。
「?何驚いてんだよ。」
首を貸しえるそのしぐさは大人っぽくとも、やっぱり子供で。
ドキドキと激しく鼓動する胸を押さえた。
この感情が間違いであればいいと願いながら。