銀時の扱いがかなりひどいです。銀時好きの方は注意してください。
急いで書いたので、かなりの短文です。
しかも話もあまり進んでないよ~!
という感じなのですが、お付き合いいただければと想っております。
それでは下のほうからどうぞ。
第6話 焦り
近藤の部屋を出てから、山崎は最高速度で走っていた。
ビュンビュンと肩が風を切った。
なぜ気がつかなかったんだ、旦那は危ないってわかっていたのに…と山崎の頭の中には自分を責めることばかりが浮かぶ。
どうしようもない焦りから、早く早くと気持ちばかり急いてしまう。
しかし何かあってからでは遅いのだ。
もし銀時が土方に何かしていれば、山崎は迷うことなく銀時を切るだろう。
土方が止めても、自分が切腹することになっても。
早く、早く、と。
副長の部屋が視界に入り、心配で気持ちが急く。
副長!
バット障子を開けたそこには…
ヤバイ!ヤバイ!ヤバすぎる!!!
目の前には天敵である銀時、そして畳の上に鮪のように俺は横に寝かされていた。
頭の中に後悔と怒りがふつふつと湧き起こる。
なぜ俺は銀時と二人きりなのか。
なぜこいつに押し倒されなければならないのか。
なぜ、山崎と沖田を二人で行かせてしまったのか。
っていうか、腕が動かないんですけど!!
「くそっ!冗談はやめろって!」
「俺はいつでも本気なんですけど、せっかく二人きりなんだから楽しもうよ?」
銀時は笑いながらも、土方の腕をがっちりと拘束し、土方の耳に口を寄せてふーと息を吹きかけた。
「うわっ!!」
土方の背筋にゾゾゾと悪寒が走った。
マジでキモすぎる!
銀時に息を吹きかけられ、土方は全身に鳥肌をたてた。
土方はこの瞬間、銀時を殺すことを決意した。
「このくそエロ野郎!さっさとどきやがれ!」
腕を押さえられ動かせないので足を振り上げて抵抗するが、銀時はヒョイヒョイと器用に避ける。
「抵抗されると俺って燃える方なんだけど。」
土方は銀時の下でかなり暴れていたので、着ていた隊服の前がはだけてしまった。
土方はそれを慌てて治そうとしたが、銀時が腕をつかんで離さない。
「往生際が悪いんじゃない?」
でもそこがかわいい、と顔を近づけてきた銀時。
土方が離しやがれ、と暴れようとしてもいっこうに気にする気配がない。
くそ~!!駄目か!!?
と覚悟を決めた瞬間。
バタン、と障子が開けられて。
俺と銀時は驚いてそちらの方を見た。
顔をそちらの方に向けると同時に耳の辺りにシュ、と鋭く風を切る音を感じた。
その直後に壁をぐさりと突きたてる音が響く。
え?今横を何かが通った?
恐る恐る、後ろを向くと、見事壁に突き刺さっている短剣が目に止まる。
ははは、と苦笑いを浮かべて前を向くと、同じように怯えたような笑いを浮かべた銀時がいた。
俺と銀時の間をあの短剣が通ったんだよな。
それを実感して、更に背中に悪寒が走る。
こえぇ。
それが二人の思いだった。
数センチ間違えば銀と気と土方どちらに当たっていてもおかしくなかったのだから。
それくらい二人は顔は近づいていたのだ。
しかし、それだけで短剣を投げてくる男も恐ろしい、銀時はそう思った。
短剣を投げられてから、ずっと殺気のような冷たい視線を背中に感じていた。
本当に、怖い…ここに来たことを後悔したいくらい、それは心の底からの恐怖だった。
「副長!大丈夫ですか!?」
局長室から全力疾走でここまで走ってきた山崎は少しだけ息を切らしていた。
息を切らしつつも、二人の体制から瞬時に何が起こっているのかを察知した。
考えるまもなく、胸元から担当を取り出して、二人の間に放った。
本当に無意識の行動だった。
無理やりであろうと、合意の上であろうと(絶対それはないと思うけど)許せない光景だった。
「あ、あぁ。大丈夫だ。」
壁に刺さった短刀を見ながら、何とか声を絞り出した。
先ほどまで銀時に襲われるかもしれないという恐怖から、短刀へと移って。
緊張していた体にやっと安心感がいきわたる。
本当ですか、と心配そうに気遣う山崎にふっとほほが緩む。
「ありがとう。助かったよ。」
くしゃ、と髪をなでると、山崎もほっとしたように微笑んだ。
なんかいい雰囲気だなぁ。
横目で二人を見て、そう感じた。
しかし先ほどの山崎を思い出し、ブルリと体が震える。
普通、短刀なんて投げねーって。
しかもすぐそばには土方もいたのに。
いくら腕に自信があっても普通の神経ならそんなこと出来っこない。
いつも地味で皆から派知られて大変そうだな、としか思っていなかったけれど。
さすが新撰組にいるだけあって、一癖も二癖もありそうだ。
しかしここにこのままいれば、この後どんな目に合わされるか…
逃げなくては!
こそこそ、と体を小さくしながら出口を目指す。
しかし狭い空間内のことだから、逃げ出そうと動く銀時に気づかないはずがない。
出口の方へ向かう銀時の服をガシッと掴み
「どこに行かれるんですか?」
あくまでも静かに…しかし怒りを感じさせる山崎の言葉に、思わず後ずさってしまう。
「え、いや。銀さん、用事思い出したから帰ろうと思って。」
ははは、と頭をかきながら、銀時には笑うしかなかった。
自業自得だ、とでも言いたげな土方を背に、山崎はさわやかな笑みで近づいてくる。
この笑みの裏でどんな恐ろしいことを考えているのか。
愛想笑いを浮かべるものの、背中に冷たい汗が流れた。
「副長はこのままゆっくりと休んでください。」
笑顔に押されるように、あぁと土方は小さくうなずいた。
「じゃあ俺は一仕事してきますんで。本当に休んでくださいね」
土方に念を押すと、山崎は銀と気を引きずって部屋から出て行った。
「ね、ねぇ!仕事するんなら、俺はもう帰ってもよくないですか!?」
「何言ってるんですか?人の話し聞いてました?復調に仇なすものを消すのが俺の仕事ですよ?今から一仕事するって言ってるじゃないですか?」
ね、と前を歩く山崎が振り返る。
何をされるのか考えると、心身恐恐の銀時だった。
「……優しくしてね?」
「…死なない程度に。」
若干、銀土らしき表現があるかもしれませんので、無理!という人はお気をつけください
銀時を嫌いではないのですが、この先の展開でどうなるかわかりません。
ですので銀時好きの人にご気分を悪くされましたら申し訳なく思いますが、ご了承ください。
それでは駄文ではございますがお楽しみいただければと思っております
朝の仕事を終え、やっとお昼ご飯だ!
と背筋を伸ばしながら、食堂に向かう沖田と山崎の姿を他の隊士は仲がいいなぁと見守っていた。
最近山崎と沖田隊長が一緒にいるようになってから、沖田隊長の機嫌がいいと一番隊の隊士は喜んでいたのだ。
突然大砲を向けられることもなければ、副長とのけんかの仲裁に借り出されないでいいようになって…これほど平和なこともない、と隊士達は思っていた。
山崎は他の隊からいきなり助勤に抜擢され、隊士から嫌がられるかなと少し思っていたのだが、そんなことは全くなく、ものすごく歓迎されていた。
というか、「ありがとう!!!」と号泣された。
ご飯を取る時も、横に沖田隊長、そして周りを一番隊の隊士がずらりと囲みこむ。
普段こんなにくっついて食べていただろうか?
昔の―といってもつい最近のことだが―思い返しても、沖田隊長が他の隊士と食べていた…という記憶はない。
いつだって副長の傍でからかっていた…と思う。
何故こうなったか、なんて考えてもわからないので、とりあえず目の前の食事に手を伸ばす。
食べながら、副長はどこかなぁと探すが、いつもの定位置に姿はなかった。
「隊長?副長の姿が見えないんですけど、見回りにいったんですかね?」
「隊長?って誰のことかなぁ。今って仕事中ですかぃ?」
と冷たい目でちらりと俺のほうを見てくる。
やばっ、と思って、すぐに「ごめんなさい、総悟さん。つい習慣で…」と言い直すと、沖田はさっきまでの不機嫌顔から一転して、ニコニコと笑った。
「それでいいんでさぁ。退。」
この様子を見て、周囲の隊士はざわざわと騒いだ。
「沖田さんが笑ってるぜ?」
「あぁしかもさっきものすごく怖かったのに、今は嬉しそうで…」
「やっぱすげぇなぁ、山崎って。さすがに副長の手綱を引いていただけあるぜ。」
と内緒話を横でする隊士たち。
話は聞こえているだろうに、沖田は口を出すことをせず、黙々と食事を続けている。
内心その通り、と拍手を送っていたのかもしれない。
食べ終えて、食器を片付けていると、ぽんと肩を叩かれた。
振り向くと、隊士があっちあっちと指を刺している。
そっちの方を見ると、なぜか局長が俺に手招きをしていた。
「どうしたんですか?局長が俺を呼ぶなんて仕事ですか?」
そう聞きながら、局長の横に座った。
局長はなんだか困っているような顔で頭をぽりぽりとかいている。
「あ~実はなぁ。ト「近藤さん、俺も話しに混ざっていいですかぃ。」
と食器を直し終えた、隊長が俺の横にどかっと座った。
ちなみに俺は正座、隊長は胡坐で。
「あぁもちろん。で、え~とな。二人の調子はどうかなと思って。」
言いかけた言葉を飲み込み、混同はどう切り出そうかと悩みだす。
「そりゃぁもちろんいいでさぁ。」
といい笑顔で笑う沖田に、近藤は内心土下座でもしたい気分だった。
「そうですね。たい、じゃなくて総悟さんも仕事ちゃんとやってくれますし。」
ねっと言うように顔を見合わせて笑う二人に、局長は一緒に笑いながらも、小さくため息をつく。
総悟が名前で呼ばせるたぁこりゃ本気だなぁ。
血の雨が降る予感がするが、近藤に止めるすべはない。
「あ~そうかぁ。よかったなぁ。」
「はい。あっところで気になってたんですけど、副長はお昼もう召し上がったんですか?今見えなかったのでどこかに出かけているのかなと思ったんですけど」
と土方を気遣う言葉に近藤は激しく涙を流す。
「や゛~ば~ざ~ぎ~!!やっぱおまえっていいやつだなぁぁ!!!」
一向に近藤の涙は止まらない。
どうしたんだろう、と山崎は困惑し、まぁまぁと近藤をなだめる。
沖田は暗い顔をして近藤をなだめている山崎のことを見つめていた。
ぐずっ、と鼻水をテッシュでふき取り、ようやく泣くのをやめた近藤局長。
ここまで豪快に泣ける近藤は、ある意味大物なのかもしれない。
「ったく、なんで泣いたんですか?いい大人ななんだから、ちょっとは周りを気にしてくださいよ!あんたは新撰組のボスなんだから!」
「あ~すまんすまん!つい涙腺が緩んでなぁ。」
と言いながらもまだ鼻をズリズリさせている。
「全くですぜぃ!山崎の手を煩わせるんじゃありやせんぜぃ!」
「うっ、す、すまん…」
と沖田に謝る近藤局長。
この構図は珍しいどころではなく、初めてではないだろうか。
沖田は相手かまわず、怒られ役、怒らせ役だったのだから。
最も怒られても気にすることなんてなく、いつもマイペースだったのだが。
「あ、いいんですよ!局長申し訳ありません!余計なことを言ってしまって。」
と二人の間に入ってとにかく誤り倒す山崎。
いくら親しい間柄とはいえ、局長にそんな態度を取っている沖田を隊士が見れば余計な噂が立ってしまうかもしれない、そう考え山崎はひたすら頭を下げた。
その様子を後ろで見ていた沖田はすっかり機嫌がよくなったのか、
「少し言いすぎましたぁ。すみやせん。」
と近藤に頭を下げたので、これには山崎も近藤もびっくりして沖田を凝視した。
こんなに素直に、しかも誰に言われることなく謝罪したのを見るのは近藤も初めてだったのだから。
「お、おまえ変わったなぁ?」
「そうですかぃ?そんなに変わってないですぜぃ。」
「いやいや、やっぱり山崎はすごいなぁ。」
と近藤は感心したように山崎を見る。
近藤の尊敬するような視線を感じ、山崎は俺は何もしていない、と思った。
だがさっきの話が気になっていたので、そのことを質問した。
「で、さっきの話なんですけど…副長がどうかなさったんですか?」
「あ、あぁ。実はなぁ…
と近藤は山崎が沖田のところへ行ってからの土方の生活、仕事ぶりなどを割愛しながら話した。
若干の修正を加えて、もし真実をそのまま話せば山崎が心配して、戻るといいそうだったから。
戻ってもらった方がトシにとっては都合がいいが、それでは総悟がかわいそうだ。
だから山崎がいなくて少し不機嫌で、仕事をずっとしている…とだけ伝えた。
「本当に大丈夫なんですか?」
目に浮かぶ副長の不機嫌そうな顔。
局長は少し機嫌が悪いといっているが、本当はもっと重症なのだろう。
沖田隊長の手前、はっきりということは出来ないのかもしれない。
「う~ん、後で様子を見に行ってもらってもいいか?」
「そいつぁだめでさぁ!今の山崎は俺の助勤ですからねぃ。」
はい、といいかけた山崎の口を隊長は押さえながら、近藤局長に拒否の意をはっきりと伝えた。
「総悟~そんな無理言うなよ?な!一回だけでいいんだから頼むよ?これから俺と二人で見回りに行こうぜ?その間に山崎は副長に顔を見せに行くということで…どうだ?」
と土下座でもしそうな勢いで頼み込む局長には、さすがに嫌だ、といえなかったのだろう。
まぁ新撰組内で局長の頼みを断る隊士なんざいない。
みな局長を慕って、命を懸けてもよいと思っているのだから。
それは隊長も同じことだ。
特に隊長と局長と副長は新撰組が出来る以前の間柄だから、思いだって俺よりもずっと強いに違いない。
そう思うと懐いていた猫が別の人に懐いていってしまったような淋しい気持ちになった。
「しかたないですねぃ。」
と沖田はいい、すくっと立ち上がった。
「行くなら早い方がいいでさぁ。今から外回りいってきやす。その間にどうぞ。」
「あぁ。すまんな。総悟、ありがとう。」
と安心したように局長は礼を言った。
山崎の方を見ると、まるで安心してください、というかのようにこくっと頷かれた。
「総悟さん。外回り終わったら、お茶にしましょうね!お土産をよろしくお願いします。」
沖田は局長が準備をする間、ぼぉっと外を眺めていたが、山崎にそういわれ、
「楽しみにしててくだせぃ。じゃぁ行ってくらぁ。」
と局長を伴い、元気よく屯所を出て行った。
先を行く機嫌のよさそうな沖田を見ながら、局長は思った。
こんなに要所、要所で心をくすぐられちゃぁ総悟だろうとトシだろうと落ちちゃうかもなぁと。
言ってほしいときにその言葉を、そしてしてほしいときにその行動を躊躇なく行動してくれるやつなんてなかなかいない。
傍において置いたら、手を離せなくなってしまうんだろうなぁと、自分の手元においておかなかったことに安心しつつも、少し残念な気がしていた近藤だった。
沖田隊長の元についてはや1週間。
予想していたよりはるかに平穏な日々が続いた。
もともと沖田隊長はサボることと同じくらい、土方副長と行動を共にすることが多かったから沖田隊長の助勤であれば。
副長にもたくさん会う機会があるだろうと、安易に考えていた。
だがそれも俺が助勤となってからは、土方に自分で言っていたようにまじめに仕事をするようになって。
…副長にも絡まなくなったのだ。少なくとも俺の前では。
三度の飯より副長をからかうことを好きだったように見えた沖田隊長がこうまで変わることになるとは、誰も思わなかったから。
沖田隊長の変りように皆が驚き、怯えていた。
局長は勤勉になった沖田隊長のことを単純に喜んでいたが。
そんなこんなで副長と会話することはおろか、顔を見るのでさえ食事中ぐらいになってしまったのだ。
あの人はちゃんと休息はとっているのだろうか。
俺がしていた仕事は誰がしているのだろうか。
「山崎ぃ~お茶くだせぃ。」
「はいよ!すぐいれてきます。」
台所に行って急須にお茶をいれ、湯びんを二つと茶菓子を少しお盆に載せて部屋に持っていく。
部屋に着くと、書類をまとめていた沖田隊長が振り返って俺を出迎えてくれた。
「おかえりなせぇ。」
これは沖田隊長の下についてから言われるようになったことだ。
副長の傍にいたときはそんなこと言われるどころか、普通に会話を交わすことさえ難しかったので。
嬉しいようなくすぐったいような、複雑な気持ちだ。
でも俺にだけ、素直だとかわいくて、何かしてあげたいと母性本能?のようなものを感じる。俺男なのにおかしいよね、こんな気持ち。
「はいどうぞ。暑いので気をつけてくださいね。」
ふぅふぅとお茶を冷ましながら、沖田は山崎を見つめった。
ただでさえ綺麗な顔なのに、そんなふうにじっと見つめられると居心地が悪くなって目をそらした。
正座をしていた足をもじもじと動かしながら、山崎はお茶を飲んでいると
「山崎は副長といつもこんな感じなんですかぃ?」
と尋ねられ、こんな風に副長のことを尋ねられたのは初めてのことだった。
「そうですねぇ。お茶をお出ししても副長仕事やめないんですよ。俺がいくら言っても休もうとしないから困っちゃいますよね。」
あはは、と困ったように笑う俺を隊長は見守るような優しい目で俺を見つめる。
「土方さんらしいでさぁ。それで俺とのコンビはどんな感じですかぃ?」
「結構楽しいですよ? 隊長優しいし…」
「そうですかぃ?なら嬉しいでさぁ。…ところで隊長って言うのやめてもらえませんかぃ?なんか肩こりまさぁ。」
隊長はぽきぽきと首を左右に動かしながら、手を肩に置いた。
その仕草が面白くて、思わずくすくすと笑ってしまう。
「何笑ってんでさぁ!そんなふうに笑われると土方さんのようにいじめてやりますぜぃ。」
と俺に威圧感を与えるように、沖田が近づいてきた。
もちろん、悪戯だろうと思っていたけど、さすがに笑いすぎたかなぁと思って謝ることにした。
「笑ってしまって申し訳ありません。なんか面白くて。…沖田さんって呼んだほうがいいですか?」
「苗字じゃなくて名前で呼んでくだせぇ。総悟って!」
「え~!恥ずかしいですよぉ!苗字でいいじゃないですか。」
隊士の中で隊長を役名以外で呼ぶ人は近藤局長と土方副長だけだ。
それを一介の隊士が呼ぶなんてなんだか分不相応な気がしたから。
「よばねぇと山崎のことハニーって呼びますぜぃ?俺も山崎のこと退って呼んでいいですかぃ。」
「そ、それは嫌ですよぉぉ!!わかりました!総悟さんって呼びますね?俺のことも名前でいいですけど、仕事中はやめてくださいよぉ!」
名前で呼んでいいと言われ、俺はなんだか特別扱いをしてくれているようで、少し嬉しかった。
ちょっとにやけてたかもしれない。
弟がいるってこんな感じかな。
沖田隊長のほうを見ると、なんだか俯いて表情が見えない。
どうしたのかなぁ。
でも隊長となら一ヶ月がんばれそう。
土方副長にはよくサド星から来たサド王子って言われてるけど、俺には優しすぎるくらい優しい。
副長は無愛想が服を着て歩いているような人なので、普段の生活の中で優しさを垣間見ることは難しいけれど。
部下のことにはそれなりに親身になって考えてくれるお人だ。
副長の傍に長くいすぎたせいで、副長のことを考えることが習慣化してしまったのか、ふとした瞬間に副長の顔が頭に浮かぶ。
俺に怒っていたように誰かを怒ってるのかなぁ、怒ってないといいなぁ。
あなたが特別親しいと思わせる素振りはそれだけだったから。